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世界に十月という月のあることが、あたし、うれしくてたまらないわ

『赤毛のアン』主人公、アン・シャーリーの台詞

 今日から10月が始まりました。爽やかな季節を迎えますが、最近の日本は猛暑と厳しい寒さが極端だと思いませんか? 地球温暖化のせいなのでしょうが、ゆっくりと季節の移ろいを感じられる春や秋がどんどん短くなっている気がします。

 いまも読み継がれる名作『赤毛のアン』(モンゴメリ作・村岡花子訳/新潮文庫)の舞台であるカナダのプリンス・エドワード島は、かつての日本のように美しい四季に恵まれた土地。物語の中では主人公・アンの成長とともに色彩鮮やかな草花と木々、小川などの田園風景がたびたび描かれます。

 10月のとある場面から一文を引用すると、

《窪地(くぼち)の樺(かば)は日光のような黄金色に変わり、果樹園の裏手の楓(かえで)はふかい真紅の色に、小径(こみち)の桜は言いようもなく美しい濃い赤と青銅色の緑に染(そま)って、その下にひろがる畑をも照りはえさせていた》

 そして楓の枝を腕いっぱいに抱えながら、育ての親・マリラに向かって叫ぶアンの台詞。

「ああ、マリラ、世界に十月という月のあることが、あたし、うれしくてたまらないわ。もし九月から、ぽんと十一月にとんでしまうのだったら、どんなにつまらないでしょうね」

 ただの並木道や池にも自分で考えた名前をつけるほど感受性の豊かなアンにとっても、紅葉の季節はとりわけ印象的だったのかもしれません。

 いまや貴重になりつつある秋の好日を、有意義に過ごしたいものです。(純)

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