レンチン時間の割り出し方も解説

◎500Wのレンジで3分のとき、600Wだと何分になるの?

 冷凍食品に記載されている電子レンジの加熱時間の目安。でも家にあるレンジはそのワット数が対応していなかったら、どうする。

 数学的に難しく言うと、ワット数と加熱時間は反比例の関係にあるということになる。

 これを近藤さんに計算してもらったのが下表の対応時間。

 500W3分の目安の冷凍食品を600Wでチンするときは、1分について10秒縮めることになる。

「計算では、ワット数に応じて時間を変えねばなりませんが、それは面倒ですよね。そこで

 おおよその目安として、1分強につき20秒と考えて、セットするとよいでしょう」

 でも、「確かに概算ですが、料理に影響が出ない許容範囲内であると考え、これも数学的な考え方なんですよ」

 

《電子レンジのワット数による目安時間の変更》
・500Wの時間を600Wにする→1分につき10秒縮める
・500Wの時間を700Wにする→1分10秒につき20秒縮める
・500Wの時間を1000Wにする→目安時間のおおよそ半分
*逆の場合は目安時間を増やす。

《「女性は数学が苦手」って本当?》
 脳の構造の違いから、女性は言語機能に長けていて、男性は抽象的に思考することが得意なことから数学に強い、という説がある。しかし最近の学説では脳には男女差はないという研究発表も出ている。

 また近藤さんも、「高校生に数学を教えていますが、数学が得意な女生徒もいます。ただ女性は、自分は数学が苦手なんだと思い込んでいる傾向があります。その背景には、男女の役割期待の違いで、女性に数学を求めなかったこともあるのかもしれません。先入観にとらわれず、数学的センスを磨いてほしいですね」と数学女子に期待。すっかり頭が固くなってしまった中高年女性はどうしたらいいのが、「脳トレによいと計算ドリルが人気ですが、ドリルだけでなく実践でも頭を鍛えてください」

《大ざっぱに把握するのも数学的知恵》
 多くの人は「数学の答えはただひとつ」だと考えている。数学の好きな理由に答えがはっきりと決まることがわかりやすくていいともいう。「しかし、答えははっきりと出さないという手法も数学にはありなんです」と近藤さん。

 例えば、レンチンのワット数は正確でなくてもこのくらいという見当がつけば問題はない。ここで大切なのは、このくらいの範囲をどのくらいにするか。適当でいいと長時間かけていれば、食品は食べられなくなってしまう。おいしく食べられる範囲内で、おおよその見当をつけるのも数学の知恵だ。また降水確率や宝くじの当せん確率も、期待値という数字で表すことで、絶対ではないけれど、こう考えられるという方向性は見えてきます。

 数学の知恵をもっと気楽に生活に活用していきたいもの!

『なるほど!毎日の役立つ数学』(近藤宏樹著/さくら舎) ※記事中の画像をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします

【PROFILE】
近藤宏樹さん ◎東大卒の数理学博士。東京大学理学部数学科卒業、同大学院修士課程修了。博士(九州大学数理学)。現在は数学教員、また国際数学オリンピック日本委員会副委員長を務める。

〈取材・文/水口陽子(つきぐみ)〉 

(週刊女性2020年11月24日号掲載)