親から子どもや孫へ
「『茨城ダッシュ』のような名前こそついてはいませんが、同様の危険運転は、首都圏以外の地域では日常的に行われています。公共交通機関が充実していないエリアに多く、とりわけ茨城のように、大都会の周辺に位置している地方都市では、頻繁に見かける行為ですね」
そう語るのは、自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんだ。
加藤さんによれば、地方都市は車道が広く、渋滞も少ない。見通しがよく、交差点では右折しやすい。さらには車社会で頻繁に車に乗るため、運転時の緊張感が損なわれがちになるという。
そうしたことから交通マナーへの意識がおろそかになりやすく、たとえ交通違反とわかっていても「茨城ダッシュ」が容認されてしまったのではないかと指摘する。
「交通マナーへの意識という点では団塊世代のドライバーに問題のある人が目立ちます。この世代が車に乗り始めた1970年~1980年代は、マイカーを持つようになり車社会が急速に発展し始めた時期。車が好きで運転に自信がある人も少なくない。運転技術を過信したり、自分はすごいんだといきがってみせたりして、交通マナーを軽視しやすい傾向があるのです。
そうした運転への姿勢は同乗する子どもや孫へと引き継がれてしまう。『茨城ダッシュ』のような危険運転が地域で定着する背景には、こうした原因があるのではないかと思います」(加藤さん)
一方、高齢社会の影響を指摘するのは、交通ジャーナリストの今井亮一さん。
「地域に高齢ドライバーが多いと、対向直進車が発進するまでに時間がかかることがあります。そのためついイライラして、急発進して右折してしまう。『茨城ダッシュ』の背景には、そうした事情もあるようです」