IT技術が発達して、便利になりました。今までできなかったことが可能になり、ビジネスの幅も大きく広がり、不合理な負担が減ったのも事実です。

 しかし、仕事の中心にいるのは「人間」ということ。

 データを駆使した戦術、いわゆる「ID野球」を実践し、万年下位のチームを優勝に導き、他の球団で活躍できなかった選手を復活させて「野村再生工場」の異名もとった野村さんの至言です。データも重要だが、その裏側には「人」がいるのです。だから、データとは真反対にあるような「縁」や「情」の機微に気づかないと最後、紙一重の勝利は掴めない、と。

 毎年、しのぎを削るプロの世界で勝負してきただけに説得力があります。

 どんなに時代が進んでも「人が人に話を聴いて、人が記事を書く」という活字メディアにいる者として心得ておきたいことです。(文)