ここ何年か「人を殺してみたかった」「死刑になりたかった」という理由で殺人を犯す事件が目につきます。先日、都内の京王線内で複数の乗客に切りかかり、殺人未遂などの容疑で逮捕された25歳の男性も、警察の取り調べで「死刑になるために有効かつ効率的な手段で、多くの人を惨殺する計画を実行した」と供述しているといいます。

 その事件では不幸中の幸いで、現時点で死者は出ていませんが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などに悩まれる方々もいるのではないかと思います。

 無差別に人を殺めようとする犯人は、努力が報われずにやるせない気持ちを抱え、おのずと世間と距離を置き、孤立してしまった結果、自暴自棄に……。という動機が多いように思うのです(もちろん、全部が全部ではありませんが)。

 その背景には「努力すれば必ずうまくいく」という教育があるように思います。

 報われない努力があることを教えていくのも大事だと考えます。加えて、そのときは、報われなかったとしても次にチャレンジできるような前向きな世の中になってほしいと思うのです。こういうことを言うと「理想論だ!」と指摘する方もいますが、理想を語れない世の中は、それでまた寂しいものです。(文)