2018年8月に逝去された、漫画家のさくらももこさん。代表作といえば、まず『ちびまる子ちゃん』が浮かぶでしょうが、ファンの間で根強い人気を誇っている作品のひとつが、’90年代にアニメ化もされた『コジコジ(COJI-COJI)』です。

『コジコジ』はとにかくシュールで、ジワジワと笑いが込み上げてくるギャグ漫画です。主人公のコジコジの正体は、動物でも人でもなく、男なのか女なのかもわからない “宇宙生命体” 。半魚鳥の次郎や雪だるまのコロ助といったクセの強い仲間たちと一緒に、メルヘンの国で暮らしています。

 その可愛らしい見た目と裏腹に、時にすがすがしいほど鋭い発言をするコジコジ。彼(彼女?)が何の気なしに発する言葉たちにハッとさせられたことは、一度や二度ではありません。笑いや皮肉の中に、ある種の哲学と、背中をそっと押してくれるようなあたたかさを感じるのです。

 冒頭のセリフは、全国に楽しいお正月を運ぶのが仕事である『正月くん』が、大晦日だというのに、急に空を飛べなくなってしまったときにコジコジがかけた一言。「正月はめんどくさい」だの「ふつうの日と同じでいい」だのという会話を耳にして自信を失っていた正月くんでしたが、コジコジの言うとおりにしてみたら、すんなり力が戻ったのでした。

 職場に学校、ママ友や趣味仲間との集まり……。何らかのコミュニティに属していると、どうしてもネガティブな声に悩まされたり、計らずも他人と自分を比べてしまって、焦ったり落ち込んだりもします。かくいう私も、自分のコンディションの悪さや、活躍する周囲のすごさを実感するたびに、「やっぱり私ってダメだ」「もっともっと頑張らなきゃ」と、自分を追い込んでしまいがちです。

 そんなときは、このコジコジの言葉を思い出すようにしています。なんだか肩の力が抜けて、生きづらさが軽減される気がしませんか? 人生はロングラン。時にはきちんと自分の心身を労わりつつ、無理のないペースで進んでいけばいいんですよね。(横)