北野武監督・脚本の名作『キッズ・リターン』(1996年)のラストシーンで、主人公の2人がつぶやく、有名なこのセリフ。

 落ちこぼれ高校生のマサル(金子賢)とシンジ(安藤政信)はうだつが上がらない日々を送っていましたが、ひょんなことからシンジはボクシングの道へ、マサルはヤクザの道へ進み、それぞれ頭角を現していきます。ともにその世界で頂点を取ったらまた会おうと約束するのですが、あるきっかけで二人とも転落してしまいます。

 青春と挫折を淡々と、しかし鮮やかに描いた今作が私は大好きなのですが、20歳ごろに初めて観たときは、「俺たちもう終わっちゃったのかなぁ?」「まだ始まっちゃいねぇよ」という言葉は絶望と負け惜しみなのだと感じていました。

 しかしもうじき40歳になる私には、彼らのつまずきなど、後からいくらでも挽回できるものだとわかります。若いころの挫折はむしろ自分の財産になるし、年を取ったとしても、挽回するのは遅くない。

 当時49歳だった北野監督も、そんな思いを込めてこのセリフを書いたのではないかなと思います。(知)