ある日Twitterのタイムラインを眺めていたら、水木しげる先生の漫画のセリフが流れてきました。かわいい顔の猫が“無の表情”でこの言葉を言う一コマに、釘づけになりました。

 調べると、漫画の出典は水木先生のコミックエッセイ『カランコロン漂泊記 ゲゲゲの先生大いに語る』(小学館・2010年に新装版が出版)でした。水木先生が「働きグセがついているから、働かないと落ち着かない」と飼い猫たちにグチると、「この世は通過するだけのものだから、あまりきばる必要ないよ。我々を見習いなさい」と返されるというシュールでほほえましい内容。

 このしゃべる猫は達観していて、「どうして働くの。まァ、死後なにも持ってゆけないし、自分のカラダだけだ」と哲学的なことを言い、水木先生をうならせます。

 水木先生が自問自答して出した答えを猫が代弁したのかな? と思いますが、先の戦争の激戦でからくも生きながらえ、妖怪の世界をも知り尽くした水木先生に「この世は通過するだけのもの」と言われると、肩の荷がふっと降りていきます。(知)