自分優先ではなくコンビ単位で考える
初期のツービートでネタ作りを担当したのはきよしだった。しかし、旧来の漫才のスタイルに則ったきよし作の古典的な漫才では、笑いをとることができなかった。そこで途中からたけしがネタ作りを買って出ることに。
ちなみに、2人が下積み期間を過ごした東京・浅草のストリップ劇場「フランス座」では、きよしが先輩でたけしが後輩だった。後輩にネタの主導権を握られ、きよしに葛藤はなかったのか?
「そんなのないよ。だって、それがプラスに転じていけばいいじゃないですか。よくコンビでいるけど、2人ともが『俺が俺が』になると、絶対うまくいくわけないんだよ。ツービートというトータルで見て、『どうしたらうまくいくかな?』というのを俺は第一に考えていたから」(きよし)
渡辺は錦鯉を組む前に2つのコンビを経験しており、そのときはボケ担当だった。しかし、今はツッコミに回っている。
「前のコンビのときにボケだったのは、こだわっていたわけじゃなくて『この2人なら俺がボケた方がいいな』ぐらいの考え方ですね」(渡辺)
やはり、自分が目立てばいいという視点ではなく、コンビとしてトータルで考えた結果のようだ。
「相棒が書くのは差別的で変態っぽいネタばっかりで劇場から怒られたけど、客にはウケたよ。あと、舞台に立ったらしゃべりが止まんないんだよ。そこに俺がかぶせるったって言葉数が多すぎると何言ってるかお客さんがわからなくなるから、端的にツッコむとしたら『よしなさい』『やめなさい』しかない。俺が余計なこと言って、そのせいでウケなくなったら意味がないからね」(きよし)
錦鯉は長谷川と渡辺の2人でネタを作っているが、その際は「長谷川に何をさせたら面白いか」という観点で考えるという。『M-1』で結果を残した、錦鯉のパチンコを題材としたネタが、まさにそうだ。
「ネタを作っているとき、雅紀さんに『パチンコ台になって』ってやらせたら面白かったので作ったネタです。だから、錦鯉のネタは雅紀さんありきですね。ツッコミをする際に気をつけていることですか? できるだけ邪魔をしない(笑)。こっちのタイミングに関係なく雅紀さんはどんどんネタを進めていくので、合いの手くらいで」(渡辺)
きよしもこう語る。
「コンビって陰と陽で一対でしょ? これをプラスとプラスにするとおかしくなるんだよ。例えば、うちの相棒が(島田)洋七と組んで漫才をしたけどイマイチだった。それは食い合いをしちゃうから。いかにボケを乗せて盛り上げるかがツッコミで、俺はそういう役割を背負ったんだから。そりゃあね、誰だって目立つ方をやりたい。でも、コンビでやるってことはちゃんとした分担があるわけじゃないですか。なのに、相手の領域まで入っていったら、そんなの存在自体を壊すのと一緒でしょ?」(きよし)