“感動する言葉”を売っているお店があるとする。人に贈って喜ばれるような名言は、知る人ぞ知る老舗の銘菓とか新進気鋭のパティシエが手がけるスイーツみたいなものかもしれない。“美味しい言葉”と言い換えてもいい。贈る側もセンスが問われるから、言葉選びに精を出す。

 でも、どんな“美味しい言葉”よりも、人の心を満たす言葉は「愛してる」じゃないかと思う。「愛してる」なら近くのコンビニでも売っているかもしれないし、もしかしたら無料で配ってるかもしれない。それくらいシンプルで、場合によっては安っぽくなる言葉だろう。

 だけど、心の底から大事に思っている気持ちを伝えたいなら「愛してる」以上の言葉はないし、伝えられた相手にとっても、これほど嬉しくて勇気がもらえる言葉はないと思う。

 手元に『愛してる、』(ケリ・ビケット=著、中村三千恵=訳/二見書房、1996年)という本がある。

〈60年間添い遂げた老夫婦の、結婚前の文通の束。それは、若き日々の真摯な気持ちを今に伝えるものだった。その気持ちを保ち続け、90歳になるまで若い恋人達のように生きた二人の姿を手紙と写真で伝える。〉(内容「MARC」データベースより)

『愛してる、』(ケリ・ビケット=著、中村三千恵=訳/二見書房、1996年) Amazonで検索したら、なんと中古で約98000円(2022年1月25日時点)の値がついていた(!) ※画像をクリックするとAmazonの紹介ページに飛びます。

 例えば、こんな手紙だ。

一九二八年九月一日 オクラホマ州タルサより・午前七時・速達
愛しいジョジョへ
 愛している、愛している。何度も何度も繰り返したい気分だ。決して聞き飽きることのない響きであってほしい。この言葉を口にするたび、心地よい気分にひたってほしい。この言葉を聞くたび、思い出や希望が心に浮かび、返答をするときの高揚感が胸にこみあげてきてほしい。
 僕は君を助け、励まし、守ってあげたい。君の理想や務めが、世界を感化し、広まるように。

(後略)

 恋人か配偶者(パートナー)か子どもか、相手は人それぞれだろうが、心を通わしている相手がいたら、その人が落ち込んでいるときに伝えてほしい、“愛している”と。手紙でいいから。(DD)