映画『男はつらいよ』シリーズで有名な俳優・渥美清さんのハガキです。

 永六輔さんに教えていただいたお話。

「渥美さんはロケなどの旅先から、毎日のようにお母さん宛にハガキを書いていました。その内容は決まって、“俺、元気”。相手が知りたいことだけを書いていたんです。お母さんは渥美さんの身体を心配していたのでしょう。これは、手紙の極意かもしれません」

 永さんご自身も筆まめな方でした。私もシンプルなお手紙を何通かいただきました。しかし、感謝だったり小言だったりが、文字を通して身に沁みるくらい伝わってきました。おそらく、永さんの「本心から伝えたいこと」だけが、時にはズバッと、時にはサラリと書いてあったからだと思うのです。

 今は、通信手段がたくさんある時代。短くても気持ちが伝わるのは、決して飾らずシンプルに本心をつづった文面だけなのかもしれません。(文)