私が生涯、大切にしたい本のひとつに、『翻訳できない 世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著/前田まゆみ訳/創元社刊)という作品があります。
タイトルのとおり、ひとことでは訳せない、世界のユニークな単語たちが紹介されている本書。大学時代、外国語学部に所属しながらも、語学への興味も勉強へのやる気も出ないというフザけた生活を送りつつあった私でしたが、尊敬する先輩から贈られたこの本を読んでからは、「言語」への親しみが一気に湧きました。
プロローグに、《他の国のことばではそのニュアンスをうまく表現できない「翻訳できないことば」たち。言うに言われぬ感情も、外国語の力を借りれば伝えられるかもしれません》と書かれているように、本書に載っていることばたちは、胸にくすぶる何とも表しがたい気持ちや経験をすくいあげてくれます。掲載されていることばのなかから、私が特に感銘を受けたり、気に入っていることばを、紹介できればと思います。
第1弾は、冒頭にある「TIAM」。ペルシア語の名詞で、「はじめてその人に出会ったときの、自分の目の輝き」という意味です。
なんて素敵なことばでしょう! 実は、私の専攻はペルシア語でしたが、今となっては、習ったはずの単語のほとんどが忘却の彼方です(遠い目)。ただ、教科書に載っていなかったこのことばだけは、一読したときからずっと、私の脳裏に焼き付いています。
私たちは、生涯に何回、「TIAM」を宿すことができるでしょうか。目のなかに、まばゆいばかりの光が満ちあふれる相手と出会えることは、大きな幸せ。チャンスを逃さないよう、今日も前を向いて、笑顔で過ごしていければなと思います♪(横)