私たちの生活を根底から変えてしまった新型コロナウイルス。いまだ終息のめどが立たず、我慢の生活はもう少し続きそうです。

 イギリスの劇作家・シェイクスピアが活躍した16世末から17世紀初頭、ロンドンは感染症のペストが大流行していました。皮膚が黒くなる症状から「黒死病」と呼ばれたペストは致死率も高く、感染拡大防止のためロンドン中の劇場が2年以上も閉鎖されていたそうで、今のコロナ禍よりさらにひどい状況だったことが想像されます。

 もともと俳優だったシェイクスピアは脚本家に転身後、劇場閉鎖の憂き目に遭います。しかし閉鎖中に書いた詩が評価され、再開後は大臣が結成した劇団の一員となり、『ハムレット』などの名作を生み出していくのです。

 ペスト時代に生きた彼は、「避けることができないものは抱擁してしまわなければならない」という言葉を残しています。憎きコロナを抱き締めることは、気分的には嫌ですが、避けられないものこそ積極的に関わっていくことで、別の答えが見つけられるかもしれない……という意味だと感じました。

 今よく聞かれる「Withコロナ」というコロナを前提にした生き方は、まさにシェイクスピアの言葉と通じています。避けられないことを抱擁して次に進める、懐の深い人間になれたら。(知)