私の大好きな書籍『翻訳できない 世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著/前田まゆみ訳/創元社刊)。タイトルのとおり、ひと言では訳せない、世界のユニークな単語たちが紹介されている本書に掲載されていることばのなかから、私が特に感銘や衝撃を受けた、お気に入りのことばを紹介させていただくシリーズ、第5弾。

 今回選んだ「RAZLIUBIT」は、ロシア語で「恋がさめ、ほろ苦い気持ちになる」という意味の動詞です。

 これ、かつて愛した人に対してはもちろんですが、アイドルやアーティスト、アニメや漫画のキャラクターなどにハマった経験がおありの方は、“推し”への思いが移ろいゆく際にも、抱いたことのある気持ちなのではないでしょうか

 かくいう私も、女性アイドルが大好きなので、今まで何度も“推し変”をしてきました。まるで天使が舞い降りてきたのかと思えるほど神々しくて、姿を見るだけで、声を聞くだけで胸が高まっていた“神推し”に、いつの間にかときめかなくなっていき、これまで全く気になっていなかった子の存在が、不思議と脳裏に焼き付いて離れなくなる……。

 そのたびに、前の“推し”に対してどこか申し訳なさを抱えてきましたが、この綺麗な響きを持つ単語に出会えてからは不思議と、「あの気持ちが色褪せていくのも、また美学」と思えるようになりました。でも、今の“推し”に対しては、できれば生涯、RAZLIBITはノーセンキューです。(横)