私の大好きな書籍『翻訳できない 世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著/前田まゆみ訳/創元社刊)。タイトルのとおり、ひと言では訳せない、世界のユニークな単語たちが紹介されている本書に掲載されていることばのなかから、私が特に感銘や衝撃を受けた、お気に入りのことばを紹介させていただくシリーズ、第9弾。

 イディッシュ語の名詞である「SHLIMAZEL」はいい気分になれる言葉ではありません。意味は、「不運としか言いようのない人」

 そもそも、イディッシュ語ってどこの言語? と思われた方もいるかもしれませんが、これは東欧のユダヤ人の間で話されていた、ドイツ語に近い言葉で、「ユダヤ語」とも称されます。

 これは勝手な推測ですが、この言葉、もしかしたら、第二次世界大戦中に生まれた、もしくは多く使われたのではないかな、と。ナチス・ドイツによるホロコーストによって、文化も尊い命も奪われたとき・・・確かに、その状況は不運でしかないし、むしろ、そんな表現で片づけてしまうようでは生ぬるいだろうな、と、胸が痛みます。

 ロシアとウクライナの情勢が悪化している今、もう二度と、「SHLIMAZEL」が出ませんように・・・と、心から願っています。(横)