「山笑う」は、俳句で使う春の季語です。山にある木々や草花が一斉に芽吹き、明るく咲きほこる様子を表した言葉です。わずか17文字でつづ綴(つづ)る俳句は、できるだけ簡潔にものの様子を描写する表現が多いのですが、その中でもこの季語は、お気に入りのひとつです。

 遠目から山が笑っているような季節。まさに春です!

 ちなみに秋は「山粧う」(やまよそおう)です。こちらも木々が紅葉して、まるで化粧をしたかのような様子を端的に表しているように思います。

 いずれも中国の古典『臥遊録』から取り入れたものとされています。

春山淡冶(たんや)にして笑うが如く 秋山明浄にして粧うが如く

 最近の日本は、以前に比べて四季がないように感じますが、ここしばらくは春特有の「ワクワク」と少しの「気だるさ」を存分に楽しみたいものです。(文)