「失笑する」の意味は? と聞かれたら、「笑いも出ないくらいあきれる」と答える人は多いのではないでしょうか。私もそう思っていましたが、これは本来の意味としては間違いでした。恥ずかしながら、また編集者としてお詫びしなければなりません。

「失笑する」の意味を調べると、「思わず吹き出してしまうこと」(『日本国語大辞典 第2版』)、「(笑ってはならないような場面で)おかしさに堪えきれず、ふきだして笑うこと」(『広辞苑 第6版』)なのだそうです。私が思ってたのと真逆じゃないか……と焦りました。

 この意味を知って頭に思い浮かんだのが、私が幼稚園の頃の記憶でした。祖母を亡くしてお葬式に初めて参列した当時5歳の私。まだ「死」の意味がわからず、みんなが悲しがっている理由もわからず、ただ、真っ黒な飾りと衣装に包まれた空間が恐怖でした。

 お葬式も中盤になって、お坊さんが「摩訶般若波羅蜜多心経〜」と読経を始めたのですが、もちろん幼稚園児には理解不能です。我が家の宗派では、お坊さんがまるで演歌か? と思うほど節をつけて歌うようにお経を読むのですが、笑いのツボが激浅だった私はこらえきれず、ひとりで爆笑し始めてしまいました。まるで志村けんさんのコントを見ているようで、みんな静かにしてるのにこの変なおじさん、歌ってるよ! おもしれ〜! という感情だったのだと思います。

 幼児のしたこととはいえ、まさに「失笑する」という言葉にふさわしい行動だったなと思います。

「失笑する=葬式で笑うような行為」と覚えるともう忘れないぞ、とひとりごちました。(知)