「博物学の巨星」とも呼ばれる、和歌山県生まれの博物学者・南方熊楠

 熊楠氏は幼少期から抜群の記憶力で周囲を驚かせるものの、優等生ではなかったといいます。というのも、授業には興味がわかず、思うままに野山を走り回っては、植物や貝類などの標本の採集をしたり、読書や写本をしたりするのに夢中になっていたから。

 成長した熊楠氏は米国に留学し、独学で細菌の研究を行います。帰国後も、寝食を忘れる勢いで研究に没頭しまくり、しばしば家族にこう問いかけていたそうです。

「お前たち、わし、今朝からメシ食ったか?」

「知らんがな・・・」とツッコみたくもなりますが、実際、熊楠氏は毎日4時間ほど睡眠をとる以外は研究に熱をあげ、身体がほてってくると、邪魔な衣服を脱ぎ捨て、さらに自分の世界に入り込んだといいます。来客にも気づかず全裸で過ごしているため、家族はとても困ったのだとか(笑)

 熊楠氏の域まで達してしまうと奇人化する気もしますが、何かに熱くなって周囲が見えなくなる経験は、私にもあります。アタリの小説に出会うと、どんなに長編でも、お手洗いにさえ立たないまま半日くらい読み続けたり、寝起きに大好きな森高千里さん&中森明菜さんのDVDを流してみたら、気づいたころには日付けが変わっていたり・・・。

 いきすぎはよくないけれども、全力で熱中できることがあるのは、悪くないかな、と。しかし、なぜでしょう。仕事をしていると、30分に1回は、「次のゴハン、何食べよっかな〜」「ていうか、もうお腹すいたな〜〜」などと考えてしまうのは・・・。(横)