「石部金吉(いしべきんきち)って知ってる?」

「いえ、知りません。誰ですか?」

「人の名前じゃないんだよ」

「え?」

「四字熟語なんだよね。ほら」

《石と金の二つの硬いものを並べて人名のようにした語》非常にきまじめで物堅い人。特に、女色(じょしょく)に迷わされない人。また、融通のきかない人物。

(出典:小学館『デジタル大辞泉』)

「へぇ〜! おもしろいですね」

 隣の席のYさんが知らなかったので、コトバスに採用。調べるとドラマ『半沢直樹』(TBS系、2020年)のセリフで使われたときに知った人も多いようです。

 さらに、石部金吉さんに鉄製の兜を被せて、極端に融通がきかない人のことを「石部金吉金兜(かなかぶと)」とか「石部金吉鉄兜」と言ったり、似たような意味で「木仏金仏石仏(きぶつかなぶついしぼとけ)」という言葉もあります。いずれも「男女の情愛に疎い」というニュアンスを含むのがポイント。

 あえて反対の意味の言葉を探すと、「久米仙人(くめのせんにん)」でしょうか。「今昔物語集」や「徒然草」に出てくる伝説上の仙人で、寺にこもって空中飛行の仙術を体得したのに、飛行中に川で着物の裾をたくし上げて洗濯する女性の白いふくらはぎに見惚れてしまい、神通力を失って墜落したのだそうです。(dd)