4月10日、日本中のプロ野球ファンは、千葉ロッテマリーンズの佐々木投手の投球に釘づけになった。彼はプロ野球で28年ぶりの完全試合を達成したからだ。

「完全試合」とはフォアボールもデッドボールも味方のエラーさえもなく走者をひとりも出さない、相手の攻撃をまさに完全に封じ込めること。佐々木投手はこの偉業に加え、13者連続三振を奪い、それまでの連続三振の記録「9」を塗り替え、更に1試合の奪三振19というプロタイ記録も成し遂げた。弱冠20歳のこの怪投ぶりに、その夜のニュースは持ちきりになった。

 そんな佐々木投手のプロ初勝利は2021年5月だった。試合後、冒頭のように問われた彼は紹介した通り「両親に」と答えた。

 岩手県出身の佐々木投手は2011年の東日本大震災で父親を亡くしている。優しかった父と実家で試合を見守ってくれた母との「両親」にと自然に口に出す若き投手の胸の内に思いを馳せると、なんとも言えない気持ちになる。

 初勝利からわずか1年後、球史に輝く記録を打ち立てた。先のウイニングボールは実家の仏壇に供えられているという。(文)