プロレスラーで一番重要なのは入場ポーズ

──以前、高木選手は「レスラーは入場8割、試合が2割」という発言もされていましたが、もう少し詳しくお聞きできますか。

『屋台村プロレス』(第1弾インタビュー参照)にいた高野拳磁さん(元新日本プロレスのレスラー)がそういう人だったんですよ。彼からずっと言われていたのが、“客は選手が入場した瞬間を見る。ゲートやドアで閉ざされた場所から、選手が出てくる瞬間を見る。その瞬間にお客をつかまなきゃいけない”って

──確かに、レスラーのモノマネをする時に入場シーンをマネする人も多いですね。

入場を大事にすることを、高野さんからすごく言われました。そこで観客の心をつかめば、リング上でなにをやっても許される。逆に言えば、入場の特色がない人って、印象に残らないんですよ

──では、ご自身の入場ポーズはどのように決められましたか?

あれはストーン・コールド・スティーブ・オースチン(WWE所属の元レスラー)のラトルスネークポーズっていうのを完全にパクったんですよ。でもやり続けていたら、いつの間にか、ファイヤーポーズとか大社長ポーズとか言われるようになったんです。ちゃんと本人からの許可ももらいましたよ!

大社長ポーズ 写真提供/DDTプロレスリング

──じゃあ、安心ですね(笑)。高木選手が入場した時に、見に来ているお客さんもマネして同じポーズをしているのを見ると、会場全体の一体感がありますよね。

「そうなんです。ポーズって大事なんですよ。単純であれば単純なほどいいんですよ。人がマネできないポーズとかしぐさって、支持されないんです。簡単でオリジナリティがあるほどお客さんの中に刷り込まれるんです」

一流のプロレスラーは頭がいい。文化系プロレスとは?

──Twitterなどの反応を見ていると、エゴサーチをよくされている印象がありますが、ネガティブな意見を見たら、つらくなったりされませんか?

僕、結構メンタルが強いんですよ(笑)。経営者目線で、一意見として参考にしています。だからそのまま鵜呑み(うのみ)はしないんです。例えば『DDTがだめだ』っていう意見を見たとする。“その人はなんでだめだったのか”って、その人がそう言った理由を深堀りするんです

──どのように深堀りをしているのですか?

「ダメ出しをしている人のプロフィールやツイートを過去までさかのぼって見ています。そうすると、実際には試合を見ていないんです。ネットニュースとかの文面だけを見て、“合わない”って思う食わず嫌いが多い。そういう意見の人たちがどうやったらDDTを見たくなるかって置き換えて読んでいるから、そんなにメンタルやられないですね」

──分析の材料にするのですね。

「そうなんです。メジャー団体と、僕らが展開しているプロレスって違う。『プロレスリング・ノア』(2代目タイガーマスクとして活躍した三沢光晴さんが創立した団体)がサイバーファイトのグループ入りして気づいたんです。DDTはメジャーがやっているようなプロレスはできない。でもDDTはDDTでしかできないプロレスをやっている。僕たちは今まで、メジャーがやらないことをやってきた。でも、トップレスラーがインディー団体でやるようなことをしだしたら太刀打ちできないとも感じるんです」

──例えば、“この人はすごい”と感じたレスラーはいますか?

一流のレスラーって、順応能力が高い。秋山さん(秋山準・元全日本プロレス所属。現・DDT所属)も、一緒に東京ドームで無人試合をした鈴木みのるさん(レスラー・パンクラスMISSION所属)もそう。棚橋さん(棚橋弘至・新日本プロレス所属)はDDTに参戦した際に、対戦相手であるスーパー・ササダンゴ・マシン(DDT所属・試合前にパワポでプレゼンを行う)の持ち技のパワポを披露したんです。本当にすごい人って、どこの場所にも合ったプロレスができるんです。だからDDTは僕らだけの価値観を、もっと一般層にも定着していかなきゃいけない

高木三四郎選手 撮影/渡邉智裕

──お聞きしていると、プロレスは非常に頭脳戦のように感じてきました。

一流レスラーって、頭がいいんです。極論を言うと、レスラーってバカではできないって思いますよ。でも不良にしかできない文脈ってあるんですよ。僕は不良が好きなのですが、不良っていう文脈をわかっている人たちって魅力的に見えるし、日本人はそこにひかれやすいんですよね

──確かに、ドラマや映画の『HiGH&LOW』や、不良漫画の『クローズ』なども人気ですよね。

「格闘技が再びブームだけれど、プロレスと違って格闘技は不良が中心。でも今の格闘技ブームは、格闘家の朝倉未来さんを筆頭に“格闘系ユーチューバー”のブームだと思っています」

──DDTはよく「文化系プロレス」と例えられていますが、そのことについてどう感じていますか?

本来プロレスって不良が持つ危うい魅力に近くならないといけないのに、最近は文化的になってきている。プロレスって型にはまってしまって、伝統芸能化しているなって危惧があるんですよ。DDTは新しいものを生み出してきた先駆者でもあるので、DDTがそうなったら終わりだと思っています。もっとプロレスは、新しいことやいろいろなことにトライしたほうがいいって思う

──『WRESTLE UNIVERSE(レッスルユニバース)』(サイバーファイトが運営する動画配信サービス)では、英語での解説も配信されています。今後は、海外展開も視野に入れていますか?

「AEW(アメリカのプロレス団体)だけでなく、GCW(アメリカのプロレス団体)やいろんな団体と関係を深め、DDTの選手を海外に派遣したり、海外の選手を呼んだりしたいですね」