私の大好きな書籍『翻訳できない 世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著/前田まゆみ訳/創元社刊)。タイトルのとおり、ひと言では訳せない、世界のユニークな単語たちが紹介されている本書に掲載されていることばのなかから、私が特に感銘や衝撃を受けた、お気に入りのことばを紹介させていただくシリーズ、第17弾。

 音楽好きの方なら、この単語を聞いて思い浮かべるのはやはり、ポルノグラフティの代表曲『サウダージ』ではないでしょうか。「ゆ〜るしてね〜恋心よ〜甘い夢は波にさらわれたの〜いつか〜また〜会いま〜しょう〜その日までサヨナラ恋心よ〜♪」というサビのフレーズはあまりにも有名で、2000年のリリースから20年以上が経った今でも、歌詞を見ずとも歌えるほどです。

 それだけ好きな曲にも関わらず、これまで『サウダージ』の意味をきちんと知らずに過ごしてきましたが、これはポルトガル語で「心の中になんとなくずっと持ち続けている、存在しないものへの渇望や、または、愛し失った人やものへの郷愁」を表すのだそう。

 この、美しくも儚い、なんとも言い表し難い感情、音楽や文学など、芸術のテーマになるのも納得です。意味を知ったあとだと、カラオケで『サウダージ』を歌うのにも一際気持ちがこもってしまいそうです。過去の失恋なんかを思い出して、ウッカリ涙ぐまないようにしなければ。(横)