もし「三英傑の中で好きなのは誰?」と聞かれたら、私は悩んだ末に「豊臣秀吉」と答えます。織田信長の生き様はかっこいいのですが、カリスマすぎて身近にいたら怖い。「たぬき親父」と呼ばれた徳川家康は超優秀な戦略家であり、その後の平安の世をもたらした人物としても尊敬しますが、あまりかっこよさはない。
そこへいくと愛嬌があって人たらしとも言われる秀吉は人間的な魅力に溢れています(と言っても私の秀吉像は主に司馬遼太郎の『新史 太閤記』で作られたものですが……)。今で言う「コミュ力おばけ」で、人の心を読み、信義に厚く、平時は敵をつくらずうまくライバルの武将とも付き合っていきます。
そんな秀吉が残した言葉が「人ともの争うべからず 人に心を許すべからず」。人と争うと無用な反発や妬みを買い、人に心を許すとつけ込まれたり、足元をすくわれたりするということ。猿の笑顔を振りまきつつ、孤高で孤独なリーダーの姿が見えてきます。(知)