私の大好きな書籍『翻訳できない 世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著/前田まゆみ訳/創元社刊)。タイトルのとおり、ひと言では訳せない、世界のユニークな単語たちが紹介されている本書に掲載されていることばのなかから、私が特に感銘や衝撃を受けた、お気に入りのことばを紹介させていただくシリーズ第21弾。

 ウェールズ語の名詞「GLAS WEN」は、直訳すると「青いほほえみ」。皮肉であざ笑うようなほほえみを指します。

 このほほえみ、みなさん一度くらいは、自分に向けられたことがあるのではないでしょうか? 私も何度がありますが、思い出すたびに気持ちがずーんと落ち込むし、GLAS WENを浮かべた人々が夢に登場し、うなされたこともあります

 トラウマにすらなりかねない、この意地悪なほほえみから逃れるのは簡単ではありません。その場でなんとか、ひきつった笑いを返そうとするものの、心の中では、その場から逃げ出したくてたまらなくなる。

 GLAS WEN、響きはきれいなことばですが、できればもう一生、味わわずに過ごしたいものです。(横)