何を隠そうこの私、幼いころから『北斗の拳』(原作:武論尊、作画:原哲夫)の大ファンでして、この度、念願の“コミックス全巻大人買い”をしてしまいました・・・歓喜!

 もともと、父がこの漫画を気に入っており、実家の押し入れの中に全巻揃って置かれていたのを、小学生時代からこっそり読み進めていたのがハマった発端。1980年代に『週刊少年ジャンプ』で連載されており、“核戦争により文明と秩序が失われ、暴力が支配する弱肉強食の世界”が舞台の作品ですから、同年代(1990年代生まれ)の女子ではあまり読んでいる人がいませんでした。

 ゆえに“あの漫画のどこが好きかトーク”ができずに育ってしまい、悶々としていた私ですが、成長過程で何百という漫画作品を読みまくっても、『北斗の拳』が自分史上、最高の漫画トップ5からランキング落ちすることはなし。今回、久しぶりに読み返して、登場人物それぞれが持つ意地やプライド、人間らしさ、愛憎模様に触れ、何度も涙してしまいました

 私のイチオシキャラは、主人公の北斗神拳伝承者・ケンシロウが対峙する、南斗鳳凰拳の伝承者・帝王サウザー。ケンシロウとの死闘の末、ついに追い詰められ、誰しもが“勝負あり”と思ったときに彼が放ったのが、冒頭のセリフです。特に、その戦いぶりであり生き様を3語で表した魂のことばが、「退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!」だと思っています。

 潔く、テンポもいい3語ですが、よく考えるとこれ、最後のひとつはあまりほめられた態度ではないかもしれません(笑)

 しかし! 「帝王は決して背中を向けることも誰かに平伏すこともなく、己の言動を反省する暇があったら、ひたすら前に進むのみ」という、彼の決意を表しているひと言だとも思うんです。前進制圧の姿勢を貫いた彼に、傲慢さよりもカッコよさを感じでしまう・・・。

 このことばとともにケンシロウに飛びかかったサウザーですが、「北斗有情猛翔破」によって敗れ、ケンシロウの言葉で、かつての恩師が与えてくれた「ぬくもり」を思い出しながら果てます。孤高な帝王として傍若無人に振る舞い続けていたサウザーが、最期に一瞬だけ優しい眼差しを取り戻したときは、胸がギュッとなりました。(横)