先日、そこそこ格式高い(?)ジュエリーショップに足を運ぶ機会がありました。そこの店員さんは、客からの問いかけやお礼などに対し、しきりに「とんでもないことでございます」と、深々と頭を下げてらっしゃいました。

「とんでもない」を丁寧に言う際、「とんでもございません」は間違いで、「とんでもないことでございます」が正しいということを知ってはいましたが、普段から「とんでもございません」を耳にすることが多すぎて、「おお、本当に、“とんでもないことでございます”を使っている人おる・・・!」と、静かに感激してしまった私。改めて、この言葉の用法を調べてみました。

 まず、「とんでもない」の語源は「途でもない」。「途」には、道筋や道のり、道理、方法などの意味があり、「途でもない(とんでもない)」は、「道理から外れている」という意味が。現在は、下記のような3つの意味で使われています。

1.思いもかけない、意外である(予想できない場合に)
2.もってのほかである(あってはならない場合に)
3.まったくそうではない、滅相もない(否定や謙遜する場合に)

「とんでもない」で一語なので、「とんでもないです」や「とんでもありません」、「とんでもございません」は正しい日本語ではありません。「形容詞+です・ます」は誤用なので、「とんでもない+です」なども、本来はNG表現なのです。

 ただ、現在は「とんでもございません」が一般化されすぎて、文化庁も「謙遜する意味では使用して問題ない」との見解を示しているとのこと。言葉が持つ意味や与える印象は、人の生活の変化とともに変わっていくものなんだなあ・・・と思いながらも、本来の意味や成り立ちを、頭の片隅にずっと置いておきたいものです。(横)