つらい時や、うまくいかない時、4年前に亡くなった父のことを思い出します。

 私の父は電気系の技術者で、夜勤もあり、小さい頃は夜遅くに仕事へ出かけていく父の姿を見送った記憶があります。休みの日は仕事の疲れを微塵も出さずに、父は私が疲れ果てるまで一緒に遊んでくれました。私は父と遊ぶ時間が大好きで、幼い頃の父との思い出は、全て笑顔で飾られています。

 思春期になってからはそんな父とも距離ができて、付かず離れずの親子関係になっていきました。

 時は流れて私が30代で仕事を辞めて、何か月も転職活動に挑戦していた頃。希望の企業に落ち続け、私の軟弱なメンタルは崩れ落ちる寸前になっていて、両親に愚痴ったことがありました。

「私が頑張ってないから、いつまでも決まらないんだ。もう何も楽しいことなんてない!」

 父と母に背を向けて感情を吐き出すと、涙が止まらなくなりました。

「頑張ってるよ、毎日」

 父の声が聞こえてきました。

「何度でも何度でも挑戦すればいい。後悔しないように」

 振り返ると、いつになく真剣な父の顔がありました。

 この時、「頑張ってるよ」と父が認めてくれたことで、私はどれだけ救われたかわかりません。この言葉に支えられて、転職活動もやり切ることができました。

 後になって、父が「若い頃は職場でいじめられてつらかった」とこぼしたことがあります。ちょうど私が幼い頃のことだといいます。仕事のつらさに耐えながら、私たちきょうだいを育ててくれたことを思うと、感謝してもしきれません。

 最近はつらいことがあると、父ならどうするかな? と考えることが増えました。

 私も大切な人が苦しんでいたら、「頑張ってるよ」と優しく声をかけられる人になりたいな、とも思います。(K)