明治44年生まれの祖母が遺した俳句をご紹介します。

 祖母は結婚後間もなく、日本が軍国主義に突き進んでいく時代に巻き込まれ、流転の日々を家族と過ごしました。旧満州(現在の中国東北部)のアムール川のほとりで、対岸のシベリアに駐留するソ連兵の軍歌を耳にすることもあったそうです。

 終戦後は貧しさに耐えながら5人の子を育て、還暦を過ぎて作りはじめた俳句を心のよりどころとしました。

 この作品は昭和の終わり頃に詠んだものですが、かの地で聴いた軍歌の記憶を8月の月夜に重ね合わせたのでしょうか。

 令和の夏、ロシアの進軍が1日も早く止むことを祈りつつ、句集のページを繰って久しぶりに祖母を偲びたいと思います。(E)