英国のエリザベス女王が96歳で亡くなりました。70年におよぶ在位中は王室の存続に力を注ぐ一方、親しみやすいチャーミングな人柄も知られ、誰からも慕われる存在でした。

 わずか25歳で即位したときの「命ある限り、私はこの身を捧げてあなた方の信頼に応えられるよう努めます」、新型コロナウイルスに怯える国民に向けた「より良い日は戻ってきます。友人にもまた会えるでしょう。家族にもまた会えるでしょう。そして私もいつかまた、みなさんにお目にかかるでしょう」など、数々の名スピーチが残されています。

 今回、紹介するのは2001年9月11日、米国同時多発テロ事件に寄せたお悔やみの一節で、原文は「Grief is the price we pay for love.」悲しみは愛のために私たちが支払う代償と訳すこともできます。身近な人を失って悲しみに打ちひしがれるのは、それだけ愛情が深かったから。「私の思いと祈りは今、そしてこれからの苦難の日々も、皆さんとともにあります」と犠牲になった方たちの家族の気持ちに寄り添い、勇気づけたのでした。

 自らの家族は3男1女に恵まれたものの、そのうち3人が結婚に失敗。ダイアナ妃の事故死や、近年は次男・アンドリュー王子の性的スキャンダル、孫・ヘンリー王子とメーガン妃の王室離脱、最愛の夫・フィリップ殿下との別れが続き、ひとりの女性としては心労が絶えない日々だったかもしれません。それでも国民の胸に響くメッセージを折にふれて発信してきた女王。日本では揉めに揉めている“国葬”問題ですが、ほとんどのイギリス人は偉大なクイーンを心から悼み、喪に服することでしょう。(純)