明後日(19日)は英国・エリザベス女王の葬儀が行われますが、今回の訃報が伝えられて以来、頭の中をよぎっているのが25年前の記憶です。
1997年8月31日、ダイアナ妃死去のニュースが流れ、週刊誌の編集部にいた私は休日に上司から呼び出され急きょ、差し替えの記事を作成。ダイアナ妃を特集する臨時増刊号の緊急出版も決まり、翌日から泊まり込みの編集作業が始まりました。美しい容姿や華麗なファッションの写真はずっと見ていても飽きることがなく、親交があった方々に本人の素顔や思い出話をうかがうなど、忘れられない経験になっています。
20歳でチャールズ皇太子(当時)に嫁いだシンデレラストーリー、夫の不倫と王室での孤立、複数の男性との恋愛スキャンダル、精力的なチャリティー活動など激動の人生を送ったプリンセス。離婚により王室を去っていたものの、葬儀は「国民葬」として行われ、エリザベス女王は「彼女の生き方から私たちは多くを学びました」と哀悼の言葉を捧げました。
ここで紹介するのは、母親の素顔が伝わるエピソードです。幼いウィリアム王子とヘンリー王子をホームレスの支援施設に連れていったダイアナ妃。そこで「人への親切には見返りを期待してはダメ」と言い聞かせ、その理由を「だってあなたにも同じことをしてくれる人がいるかもしれないから」と説いたそうです。皇太子妃として、ひとりの人間として、立場の弱い人たちに手をさしのべる心構えを息子たちにしっかりと伝える。こうした一面も、今なお多くの人に愛される所以でしょう。
仕事相手に貸しを作っておけば今度は自分が頼み事をしやすいかも、なんて邪心にまみれた自分のことはさておき、賢さと優しさに満ちたダイアナ妃の言葉をもっと聞きたかったと思うのです。(純)