『枯れた技術の水平思考』とは、任天堂株式会社に在籍していたクリエイター・横井軍平氏の独自のゲーム開発哲学です。
横井氏は、現在ではスタンダードになったゲーム機の“十字キー”を初めて提唱したクリエイターであり、現・任天堂株式会社の宮本茂氏と並んで、同社を世界的大企業へ成長させた立役者としても知られています。
1997年、横井氏はあまりにも短いその生涯を終えますが、携帯ゲーム機の『ゲームボーイシリーズ』の生みの親として “携帯ゲームの父”とも呼ばれ、ゲーム業界の第一線を走り続けたクリエイターでした。
冒頭で紹介した『枯れた技術』とは、“すでにありふれていて広く普及している技術”を意味しており、『水平思考』とは、“物事を広く多角的に見つめる思考方法”を意味しています。
新しい技術や情報だけに頼り、技術が高い/低いという尺度である垂直思考をしてしまえば、そこから生まれたサービスや情報の成長には限界が来てしまい、コストも膨大になってしまう。であれば、すでにあるノウハウや技術を別の考え方や製品と組み合わせることで、これまでにない画期的な商品を生み出すことができると、横井氏は提唱しました。
世の中の情勢を見つつ、何が読者にとって“ふむふむ”と思ってもらえるのかをよく考えますが、なかなか簡単にはいきません。横井氏が提唱した『枯れた技術の水平思考』は、編集に携わる自分にとっても見習わなければいけないと、ひしひしと感じています。
目新しいトピックスやネームバリューに惹かれるだけでは、納得のいく記事を作ることはできないかもしれない。でも、今の現状や普段あまり気にならないことを少し斜めに見てみる。ときには右から、ときには裏返す、あえて放置して、もう一回掘り返してみる。その試行錯誤の連続が、皆さんに面白いと思ってもらえる記事の礎になれたらとふと思う、32歳の秋でした。(西)