2022年10月18日。サッカー元日本代表・中村俊輔選手が、現役引退を発表しました。
類まれなサッカーセンスと正確無比の左足から、“天才レフティー”の名をほしいままにした、日本トップクラスのサッカー選手。“中村が出れば何かが起こる”という期待を常に持たせてくれたスーパースターは、サッカー少年だった私にとっても憧れの存在でした。

 そんな中村選手のキャリアの中で印象的なのは、スコットランドリーグのセルティックFCでの活躍。そして冒頭の言葉は、当時セルティックFCで監督を務めていた、ゴードン・ストラカンがメディアへの取材で答えた言葉です。

 中村選手のプレースタイルは、相手の意表を突くパスやシュート、華麗なドリブルと正確なフリーキックなど、テクニカルな部分が強みでもありました。その反面、ヘディングや身体のぶつかり合いは強くなく、激しい肉弾戦が行われるヨーロッパリーグにおいて、それは欠点でもありました

 ある記者会見で、中村選手のフィジカル面を指摘されたゴードン・ストラカン監督。彼は、中村選手についてこう答えました。

「周囲が言うとおり、中村はタックルができない。ヘディングもできない。それがどうした。彼は天才だ」

 この会見があった同シーズン。中村選手はヨーロッパチャンピオンズリーグのベスト16進出に貢献。個人でもリーグ年間最優秀選手賞と、スコットランド・サッカー記者協会年間最優秀選手賞を受賞。自身の欧州での選手キャリアの中でトップクラスの成績を残しました。

 太陽が照り付ける暑い日も、雪が降りつもる寒い日も、誰よりも長く居残り練習をしていた中村選手。練習終わりに取材したい記者たちも、中村選手のストイックさに疲弊してしまい、“番記者泣かせ”と呼ばれるほどの努力家だったと言われています。自分の弱みを理解したうえで、強みを最大限に引き出すための努力と実力を誰よりも評価していたのが、ゴードン監督だったのでしょう。

 今後の去就が注目されるところではありますが、中村選手、まずは本当にお疲れさまでした。そして今までもこれからも、私にとってのファンタジスタは永遠に中村俊輔です!(西)