コトバス執筆のネタ探しとして、本日10月25日に生まれた有名人を探していた時、花森安治の名前が目にとまりました。

 花森安治(1911年-1978年)は雑誌『暮しの手帖』の初代編集長です。

 今でも尊敬を集める著名な編集者のひとりですが、数年前に世田谷美術館で開催された「花森安治の仕事―デザインする手、編集長の眼」を見に行くまではどんな人物か知りませんでした。展示を見て、今も全く色あせない優れたアートディレクターとしての才能にも驚いたのですが、何より編集者としての真摯な姿勢に感銘を受けました。

 現在の『暮しの手帖』を読むと、“スローライフ”や“丁寧な暮らし”といったイメージを抱きますが、花森編集長の時代は、生活者の目線から、生活用品や家電などの商品を長時間にわたりテスト使用して、誌面で微細にレポートするという“超実用企画”がメインでした。中立性を守るために、自社以外の広告をいっさい載せないという徹底ぶりだったそうです(広告なしというポリシーは今も受け継がれています)。

 すべては読者のため。その花森編集長の志は、創刊以来、毎号掲載されている前書きにも現れています。

これは あなたの手帖です
いろいろのことが ここには書きつけてある
この中の どれか 一つ二つは
すぐ今日 あなたの暮しに役立ち
せめて どれか もう一つ二つは
すぐには役に立たないように見えても
やがて こころの底ふかく沈んで
いつか あなたの暮し方を変えてしまう
そんなふうな
これは あなたの暮しの手帖です

 わたし(作り手)とあなた(読み手)のフラットな関係性がとても心地よく、理想的に感じられました。

 別媒体の言葉を借りるのも何ですが、fumufumu newsの目指すべき姿と似ていると感じました。編集者の端くれとして、胸に刻んでおきたい言葉です。(知)