ドラマ化もされた森博嗣先生の有名小説『すべてがFになる』シリーズの1冊。犀川先生と萌絵の掛け合いが魅力のひとつなのですが、その中で、個人的にかなりグッときたセリフのご紹介です。

 私は人と議論をしたり、他の人の意見を聞いたりするのが好きなのですが、よくみんなが言う、「良い意見だね」とか「その意見は良くないね」などの発言に昔から違和感があったんですよね。ただ、その違和感をうまく言語化できていなかった学生時代、このセリフを目にして“そうそう、これこれ!”と膝を打ったのをよく覚えています。

 今の世の中、誰もが“言葉”を発信しやすくなったこともあり、多様な意見があふれています。しかしその分、頭ごなしに”悪い意見だ”と否定されているケースもよく目にします。でも、それらの意見は、“多数派の考えに沿っていない”にすぎず、尊重され、検討されるべき意見のはず。

「人と違う意見だから悪い、間違った意見だ」と考えるのではなく、「人と違う意見だから“こそ”、ちゃんと考慮・検討すべき意見だ」ととらえるべきだと思うんですよね。

 多種多様な考えをテーブルに載せて議論ができる今の世の中だからこそ、いろんな意見を大事にする気持ちを持つことが大切。『意見に良いも悪いもない』。その意識をみんなが持てれば、もっと世の中はよくなるのではないかなぁ、としみじみ思っています。(Mr.K)

【森博嗣】某国立大学の工学部助教授の傍ら1996年『すべてがFになる』(講談社)で第1回メフィスト賞を受賞し、衝撃デビュー。 ※画像をクリックするとアマゾンの紹介ページに遷移します。