安野モヨコさん原作の漫画『働きマン』(講談社)。出版社に勤める編集者・松方弘子(28)を中心に、さまざまな登場人物の仕事観がリアルに描かれた作品です。
漫画の舞台となるのは、週刊誌編集部の「週刊JIDAI」。主人公の松方は、プライベートが犠牲になろうが、恋人と上手くいかなかろうが、自身の仕事スイッチが入ったとき、全てを忘れて猛烈に働く「働きマン」モードに変身します。
冒頭の言葉は、そんな松方の生き方を表したようなひとこと。ハードワークもいとわない、プライベートも関係なく、寝食を忘れて人生をかけたいものが、松方にとっては編集者としての仕事でした。ただ、私がこの言葉を好きな理由は、松方自身のハードワークさゆえではありません。
本作にはさまざまな人物が登場しますが、その中で主人公の松方が激怒するシーンが何度か登場します。例えば、何の調査もなしに個人の感情のみで記事を入稿する編集者、性別だけで仕事の良しあしを判断する先輩社員などなど。しかし、その中でいつも共通して感情を爆発させるのは「楽な仕事ばかりしている人」である点でした。
そのため、一見世渡り上手に見えるけど、実は周りへの根回しを徹底している人、色恋営業だと揶揄されようが、自身の仕事観を絶対に妥協しない人……作中の言葉を借りるならば、「心にペンを差して闘う」ために手段をいとわない人たちには、最大のリスペクトを送っています。人の仕事観を決して頭ごなしに否定しない点が、より冒頭の言葉に意味を持たせているのだと思います。
仕事への哲学は人それぞれですが、自身の信念を曲げずに闘う人=それが松方にとって“仕事人”であるという点が垣間見えるシーンが幾度となく登場し、最近読み返してモチベーションが上がった漫画。私の前の席にいる先輩も、編集者のバイブルとして大切にしているそうでした。
私が死ぬ前に何を思いたいかは、まだ見つかっていません。でも、死ぬ気で仕事をしたなーという経験は必ずその後の人生を豊かにするはず。仕事したなーと思って死んでも後悔しないような日々を、これからも歩んでいきたいものです。(西)