この2〜3年くらいでしょうか、アスリートのインタビューでよく耳にするようになりました。コロナ禍で試合に出られる喜びや、支えてくれた仲間と家族への思いを語る文脈で使われがちなこの言い回し、ネットを検索してみると私のほかにも気になっている人が多いようです。日本語的に「感謝の言葉もありません」が正しいのではという指摘や、この言い方を広めたのはエンゼルス・大谷翔平選手だとの説も。

 あるいは近年、Twitterを中心に流行(はや)った「〇〇しか勝たん」に派生する若者言葉なのか……と思いきや、プロ野球日本シリーズを制したオリックス・中嶋聡監督、情報番組『スッキリ』終了を発表したタレントの加藤浩次さんも、選手や共演者に対して「感謝しかないです」と述べていて、幅広い世代に浸透しています。

 本来、「〇〇しかない」は否定的なニュアンスで使われるものだと思いますが、言葉は時代につれて変わっていくもの。「感謝の気持ちでいっぱい」のさらに上をいく、感謝以外の思いは入り込む余地がない究極のお礼の言葉だといえるかもしれません。

 私も飲み会の支払いの際に財布を開き「1000円しかないです」などと言っていないで、感謝を最大限に表してみようと思います。(純)