アニメや漫画、音楽や映画で登場する「世界線」という言葉。Official髭男dismの楽曲『Pretender』の歌詞にも“出会えた世界線”という歌詞が登場するなど、令和になってからよく聞くようになった気がします。

「世界線」は、一般的には相対性理論で用いられる物理用語。Wikipediaによれば《零次元幾何を持つ点粒子の時空上の軌跡》を意味するとされています。文系まっしぐらの私には暗号に見えて仕方がないですが、日常生活で使われている世界線は“あるはずだった未来や過去”、“無いはずの世界”、“パラレルワールド”のような意味合いで使われています。

 世界線という言葉に、現在のようなタイムトラベル的な意味が内包されるようになったのは、2000年にアメリカのインターネット上に現れたタイムトラベラー“ジョン・タイター”のネット上の書き込みがきっかけと言われています。2036年から来たと語るタイターは《使用したタイムマシンは約60年内の移動が可能であり、それ以上の過去や未来に行こうとすると、世界線(世界)のズレが大きすぎて全く異なる世界にたどり着いてしまう》と書き込んでおり、日本語訳で初めて「世界線」という言葉が誕生した瞬間とされています。

 日本では、ジョン・タイターが語った内容も盛り込まれた2011年放送開始のアニメ『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』のヒットもあり、そのころから世界線という言葉が広がり始めました。もともとパラレルワールドを設定としたアニメは『ひぐらしのなく頃に』、『時をかける少女』など2000年代にも存在しましたが、『STEINS;GATE』は、主人公・岡部倫太郎が、秋葉原を舞台に何度も時間を行き来するストーリーになっており、作中には“α世界線”、“β世界線”という言葉が頻繁に出てきていました。

 

 

 過去のいろんな出来事を思い返すと、“あのとき〇〇していれば、今頃は別の世界線だったのかもな”という、たられば妄想をすることが多い私ですが、最近ではメタバースやVR,ARなどのテクノロジーの発達により、たらればで妄想していた「世界線」を自由に行き来できるようになるかもしれません。

 そんなことを考えている今この瞬間も、実はさっきまでいた世界ではないとしたら?目に見えている事象が、実は存在しないものだとしたら? このページを見ているあなたの世界が、過去なのか、未来なのか、別の次元なのか。どうか私が生きる世界線と、皆さんの世界線が一つでありますように。またお会いできることを楽しみにしています。(西)