いつもコトバスのネタ探しには時間がかかるし難儀するのですが、今回は今日、偶然見かけた言葉を選びました。

 家から最寄り駅への道を歩いていたとき、いつもより大回りして神社のある道を選びました。鳥居の前を通ったところ、ちょうど太陽の光が鳥居の奥の本殿に降り注いで美しく照らしていて、何か吸い寄せられるように本殿に足を向けていました。

 この神社はごちゃついた住宅地の中にあるにもかかわらず敷地が広く、まっすぐ伸びた参道は100メートルくらいあるでしょうか。風が吹くと高さ30メートルくらいありそうな大きな並木がゆれて「ザザザーッ」と音を立てます。鳥たちのさえずりも聞こえ、目を閉じるとまるで森の中にいるようで、個人的にとてもリラックスできる場所でもあります。

 お賽銭を入れて祈ると、お賽銭箱の横に東京都神社庁が毎月作っているらしい「生命(いのち)の言葉」という短冊形のフリーペーパーが目に入りました。そこに書いてあったのが、今回の言葉です。

 最初は、「恩」という言葉がちょっと説教じみているなと感じましたが、それは私が健康で平穏に毎日を過ごせているからなのかもしれません。人への恩ではなく、自然への恩というのは意識することは少ないですが、次の瞬間にも、天変地異があれば自分などすぐに消える存在だと思うと、今聴いている風の音も鳥の声も、愛おしく思えます。

 ちなみに平澤興さんというのは、日本の医学者で京都大学総長を務めた偉人だそうです。(知)