12月の夜にワイングラスを傾けながら聴きたい、小粋なジャズのバラードをご紹介しましょう。『Violets for your furs』という楽曲で往年の大歌手、フランク・シナトラやビリー・ホリデイなどによる録音が残されています。

「violet(バイオレット)」はスミレの花で、「fur(ファー)」は毛皮のコートやマフラー。《I bought violets for your furs and it was spring for a while , remember ?  I bought violets for your furs and there was April in that December》という歌い出しの詞を意訳すると、こんな感じかと。

《僕がプレゼントしたスミレをあなたのコートに飾ったら 少しの間だけ春になったのを覚えてる? 僕がプレゼントしたスミレをあなたのコートに飾ったら 12月なのに4月が訪れたようだった》

 小雪が舞い落ちるニューヨークの街角で春の訪れを告げる花をモチーフに、男女が恋に落ちるシーンを美しいメロディーにのせた、都会的でおしゃれなラブソングです。

 ちなみに日本のヒップホップやラップは歌詞が韻を踏む(複数の単語の母音がすべて一致していること)のが大きな魅力ですが、洋楽にもそうした曲が多いことをご存じでしょうか。『Violets for your furs』では「remember」「December」が韻を踏んでいます。言葉選びの規則性を保ちながらロマンチックな恋心を表現できるクリエイターは昔も今も天才ですね。私もそんな語彙力と感性が欲しかった……。(純)