2012年に出版した著書『聞く力』(文春新書)がミリオンセラーになった阿川佐和子さんの言葉です。私自身、雑誌の仕事をするようになり、先輩の記者や編集者からも同じようなアドバイスをもらいました。

 曰く「世の中の多くの人が、他人に何かを教えてあげたいという欲求があるもの。だから話を聞きながらうまく相槌を打つと、相手はどんどん乗って喋ってくれるものだよ」と。

 そんなアドバイスをいただいて、私も取材時に「えっ、そうなんですか! 知らなかった!」などと少し大げさに相槌を打ってみたりしたものです。うまくいくこともありましたが、私があまりにワザとらしかったのでしょう、見透かされてしまい、相手の気分を害してしまうことも(涙)。

 阿川さんの言葉は主にインタビューの際の心得だと思いますが、友人、同僚、上司や取引先との会話にも生かせる話だと思います。ただ、あまり計算してやっていると私のように見透かされてしまい、結局会話が弾まないという結果になりますのでご注意ください。

 つまりこの相槌の真意は、「相対する人にきちんと興味を持って真摯に向き合うこと」なのだと思います。そんな気持ちがないと、どんな人ともうまくコミュニケーションなど取れるわけありませんからね。自戒を込めて。(文)