歴代の朝ドラの中でも、刺さるセリフが多い作品だと個人的に感じている『舞いあがれ!』。主人公の舞(福原遥さん)を中心に家族や友人、職場の先輩など登場人物の多くがお互いの存在を尊重しながら、地に足のついた生き方をしているように見受けられ、ドラマの根底に流れている温かさに心を動かされるのかもしれません。

 今週放送された回では、歌人の貴司(赤楚衛二さん)が顔なじみの中学生・陽菜(徳網まゆさん)に「言葉ってさ、こんなにいっぱい要らんくない?」と問いかけられます。その理由は、学校の友達との会話が「ヤバい」「かわいい」「キモい」の3語だけで成り立つから──。

 それはさすがに極端ですが、当たらずとも遠からずな気が。私のようなおっさん世代でも安易に口にしがちなワードで、特に「ヤバい」はピンチのときも、おいしいものを食べたときも使えて超便利(語彙力……)。「かわいい」も普通に言うし、まぁ「キモい」はあまり言わないけれど。

 そんな陽菜に貴司は、無限にある語句の中から自分の気持ちをぴったり表すコトバ選びの大切さを諭します。言葉を生業(なりわい)にする貴司だけに説得力は抜群。世界の言語の中でも、特に日本語は似た意味でも微妙にニュアンスが異なるものなど、表現のバリエーションが実に豊かだと思います。「ヤバい」に代わる言い方なんて、いくらでもあるんですよね。(純)