余談という言葉を辞書で調べてみると“本筋から離れた話”とのこと。明確な意味を知ると、なんだかあまりよくない言葉に感じますが、果たしてそうでしょうか。

「これは余談ですが」そう言って始まる話こそ、面白いエピソードや知識が含まれていることはないでしょうか。

 私は以前、営業職を経験していますが、当時、“結論”から話せるように、しつこく訓練をしていた時期がありました。もちろん時と場合によりますが、忙しい上司や、業務の合間を縫って時間を割いてくれるクライアントに(クライアントにとって、ほとんどの場合、他社の営業から提案を受ける時間は、最優先業務ではないので)、最も端的にわかりやすく、かつ自身の意見や意思を伝える必要があります。

 そのため、起承転結にこだわっていると、「結論はなんですか」と、話の途中でカットされて、肝を冷やすこともしょっちゅうでした。

 一方で、私がいま務めている“編集”という仕事は、“幾度となく思考を巡らせ、本筋から離れた会話や議論を交わすことから、新しいアイディアが生まれてくるのだ”と、上長に教わりました。

 編集部の採用が決まり、会社説明の際に言われたその言葉は、思考がはたと停止してしまうとき、よく思い出されます。

“思いもよらぬ斬新な企画”を見つけるのは、なかなかに難しく根気がいるものですが、余談話に耳をすませ、会話に積極的に参加し、歩みを進めていきたいと思います。(本)