日本中を熱くさせた、WBCの侍ジャパン。大会が終わってから数日がたちますが、まだ感激が冷めません。1人のスター選手だけが輝くのではなく、日替わりでヒーローが現れるチームワークが素晴らしかった……!

 WBCといえば、イチロー選手らが活躍した過去の大会では相手国への対抗心がむき出しになる場面もありました。ところが今回は全体的にフェアプレーが目立ったように思います。例えば試合に負けた後、勝者の日本チームに拍手を送り観客の心をつかんだチェコ。佐々木朗希投手が死球を与えた相手に、お詫びのお菓子を届けた後日談も話題になりました。また、現役時代に野茂英雄さんとバッテリーを組んだ縁で日本ファンへの敬意を表したイタリア代表のピアザ監督。大熱戦を繰り広げたメキシコのヒル監督も「帽子を脱ぐしかない。日本は誰もあきらめなかった」と潔く日本の強さを認めました。

 スポーツの素晴らしさと爽やかな気持ちを思い出させてくれた敗者たちの姿も、記憶に残ることでしょう。

 そしてMVPに選ばれた大谷翔平選手。2012年、北海道日本ハムファイターズの監督だった栗山英樹監督にドラフト会議で指名されて以来の師弟関係はよく知られているところ。国内の球団ではなくメジャーリーグを希望していた少年に、栗山監督はこんなメッセージを書き込んだサインボールを渡したそうです。

2023年1月6日、WBCに向けた記者会見に出席した大谷翔平選手と栗山英樹監督 撮影/高梨俊浩

《大谷くんへ、夢は正夢。誰も歩いたことがない大谷の道を一緒に作ろう》

 当時は不可能とされていた“二刀流”へのチャレンジが認められ、大谷選手は日本ハムに入団。それから10年半後、名実ともに世界一のプレイヤーとなったのです。

 同じく大活躍した吉田正尚選手も小学校の卒業文集に《ぼくの将来の夢は、大リーガーです》と書き記し、今シーズンからボストン・レッドソックスでプレーします。夢を言葉にして叶(かな)えた侍たちに熱いエールを送りましょう!(純)