「ジュリアに傷心」は売野の最大の苦労曲、「涙のリクエスト」は“押さえ”だった

 その中で第1位は、'84年末に5作目のシングルとしてリリースされた「ジュリアに傷心(ハートブレイク)」昭和のレコード売り上げも、平成後期に多かったダウンロードでも、そして今回の令和のストリーミングでもチェッカーズの中で堂々1位となった。

 この感想を売野に尋ねると、

「まあ、この詞は5回書き直しという自分史上、最高記録を出した作品だから(笑)、この順位は妥当だろうね。でも、もっとうれしいのは『涙のリクエスト』(14位)も、ちゃんと聴いてもらえているということかな」

 とのこと。注釈すると、「ジュリアに傷心」は、作曲の芹澤廣明からなかなかOKが出ずに途中、「もう他の作家に替えてくれ」と思ったほど大変だったという。また「涙のリクエスト」のほうは、売野が発注された内容とは別に“押さえ”のつもりで書いた歌詞。当時チェッカーズがやっていたドゥー・ワップ('50年半ばにアメリカで隆盛した合唱スタイルの一種)からヒントを得て、発注を受けていた”ロンドンのニューウェイブ風“よりも、懐かしいオールディーズが似合うと思って書いてみたところ、うまくハマったのだそう。'23年3月時点では、ヤマハミュージックエンタテインメント管理のオリジナル音源が未配信で後のライブ音源しか配信されていないため、やや低めの14位となっているが、デビュー40周年となる今年、もしこのあたりのオリジナル音源がリリースされたら、さらに人気となるだろう。

「星屑のステージ」のヒントは「喝采」、当時はシングルを想定していなかった

 そして、Spotify2位にはシングル売り上げでは4番手の「星屑のステージ」がランクイン、しかもトップの「ジュリアに傷心」と接戦で健闘している。一般的に、サブスクではバラードやマイナー調の楽曲は順位が低めになることを考えると、これは相当な人気といえよう。ちなみに、「ジュリアに傷心」も「星屑のステージ」も、9割以上が国内で再生されている。つまり、「星屑のステージ」は、懐メロ番組や主題歌となった当時のドラマ『うちの子にかぎって…』(TBS系)がらみで紹介されることで、国内の幅広いリスナーに広がっていると考えられる。

「『星屑のステージ』は、“ちあきなおみの『喝采』のような詞を書いてほしい”とプロデューサーから言われて、チェッカーズとファンの子の関係を歌った、私小説的なものを書けばいいと思って作ったんだ。でも、まさかシングルなるとは思っていなかったので、力まずにわりと早く書けたかな」

 そのストレートな思いが、チェッカーズの演奏や歌声の力強さも相まって、現在での大人気につながっているのかもしれない。

ブルーのシャツと水色のスニーカーの合わせがとってもおしゃれ! 撮影/伊藤和幸