大型連休の初日、4月29日は「昭和の日」ですが、かつて「天皇誕生日」だったことを知る世代の方も多いでしょう。今回のコトバは、昭和天皇のこんなエピソードから。

 あるとき職員が御所の庭の手入れを行い、「雑草が生い茂ってまいりましたので、一部お刈りいたしました」と報告したところ、昭和天皇は「雑草ということはない。どんな植物でも、みな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる」と注意したそうです。生物学者という一面を持ち、『皇居の植物』などの著書もある陛下の、あらゆる草花への愛情がうかがえます。

 実はこの言葉、そもそもは“日本の植物学の父”といわれる牧野富太郎によるものだとか。いま放送中のNHK朝ドラ『らんまん』の主人公は富太郎をモデルにしていますが、劇中でこんなセリフがありました。

 「名もなき草はこの世にないき。人がその名を知らんだけじゃ」「どんな草やち、同じ草らぁひとっつもない! 一人ひとり、みんな違う! 生きる力を持っちゅう!

 市井の民を植物にたとえながら、その個性の多様さと、どんな環境でも生き抜いていく人の強さを訴えたのです。陛下は生前、富太郎から講義を受けたことがあり、その天真爛漫な人柄や学問を究めるひたむきな姿勢に感化されたのかもしれません。

 ところで昭和天皇といえば、他にも私が好きな“名言”があるのですが、それはまた別の機会に。(純)