自分が受けている試験の問題が、事前に他の受検生に漏れていたら……。
志望する会社の入社試験で“替え玉”が受検していたら……。
その詐欺的行為には、誰もが「絶対、許せない」と憤るに違いない。そんな不正事件が続いている──。
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柔道整復師とは、接骨院や整骨院で治療を行うための国家資格。柔術の活法を応用して捻挫(ねんざ)、脱臼(だっきゅう)などを治療するもので、1993年から国家試験が行われている。受検には養成校で3年以上の教育課程修了が必要で、近年の合格率は6割前後。
その筆記試験問題が10年近く漏洩していることが発覚した。
東京地裁での裁判には多くの傍聴人が集まり、資料映像として、報道陣向けに公判前の法廷の様子が撮影された。
被告人は2人。主犯の倉本健司(62歳・仮名)は整骨院の経営者で、20年以上前から専門学校に勤務している。前任者から引き継ぐ形で、柔道整復師試験の委員として、問題の作成などを担当していた。
もう1人の満田文雄(65歳・仮名)も整骨院経営者だ。試験実施機関である柔道整復研修試験財団の元理事で、倉本被告とは違う専門学校で講師をしていた。2人は30年来の友人で、お互いに「くらちゃん」「みっちゃん」と呼び合う仲。満田被告のほうが3歳年上だが、上下関係はなく、お互いの金銭授受はなかった、という。
2人の裁判は同じ法廷で行われた。5メートル離れた斜向かいの