春と秋の風物詩ともいえる皇室行事の園遊会。天皇・皇后両陛下が芸能人やスポーツ選手など各界の功労者を赤坂御用地に招き、開催されます。20年ほど前に現場で取材した私の目に映ったのは、広々とした日本庭園でジンギスカンやオードブルの料理が振る舞われ、ドラマに出てくる社交場さながらの華やかなガーデンパーティー。タキシードやドレス、訪問着に身を包み晴れやかな様子の出席者をうらやましく思ったものでした

 4年半ぶりに行われた一昨日の園遊会ではあいにくの雨の中、スピードスケートの高木美帆選手、卓球の伊藤美誠選手、車いすテニスの国枝慎吾さんらオリンピアンやパラリンピアンが参加。皇族方と交わした会話がニュースで報じられる中、昭和時代のこんな微笑ましいやりとりを思い出しました。

 ロサンゼルス五輪の金メダリスト、山下泰裕さん(現・JOC会長)が昭和天皇に「柔道で一生懸命やっているようだがね。ずいぶん骨が折れますか」と聞かれ、答えた言葉は「2年前に骨折したんですけども、今は体調もよく頑張っております」。昭和天皇は骨が折れる=苦労する、という意味で質問したのですが山下さんは文字どおり受け取り、珍問答になってしまったのです

 もっとも最近、日常会話の中で「骨が折れる」という慣用句を聞くこともほぼなくなり、このエピソードのおもしろさが伝わるのか(特に若い人に)……? 本稿を書いた手間が「くたびれ損の骨折り儲け」にならないことを祈ります。(純)

1982(昭和57)年5月に行われた園遊会で、昭和天皇からねぎらいの言葉をかけられる山下泰裕さん。隣には黒柳徹子さんの姿も