被告は10歳から料理、洗濯、掃除、7歳年下の妹の世話も
法廷で、被告の7歳年下の妹が証言した。妹は被害者の娘でもある。佐久間被告が10歳のときに両親が離婚してから、母・兄・妹の3人で暮らしていた。
「母は離婚してから、酒に溺れるようになって、いつも昼間から飲んでいた。酔っぱらって訳がわからなくなり、暴力をふるわれたことも。家事はほとんどせず、兄がやってくれて、私が手伝っていた」
うつ病を患って、その後、糖尿病を発症した母にとって、家事や子育ては大変な作業だったに違いない。しかし、幼い兄妹にとって、頼る大人は母しかいなかった。
離婚した父親は2人の子どもを引き取ることを提案したが、母は「絶対に離れたくない。子どもを取られるくらいなら、殺す」と拒否。父は、毎月15万円の仕送りをしていたという。
妹は、被告を弁護する証言を続ける。
「母は1人で生活するのが難しい人。寂しがり屋で、“かまってちゃん”だった。私が小学生のころから学校に行かせてくれなかったり、遊びに行かせてくれなかったり。
制服を破られたり、大切なものを壊されたことも……。私は母に近寄らないようにしていた。兄がいてくれて本当に助かった」
佐久間被告は小学4年生のころから、食事、洗濯、掃除とともに、幼い妹の世話もする“ヤングケアラー”にならざるをえなかったのだ。
ヤングケアラーとは、大人の代わりに家事や家族の世話、介護などを日常的に行っている子どものこと。厚労省の調査(2022年発表)では、小学6年生の15人に1人が「家族の世話をしている」と回答。2023年4月に厚労省から「こども家庭庁」に移管している。