裁判長は「お父さんと妹さんが、あなたが帰るのを待っています」
2023年5月19日、裁判長から告げられた判決は、懲役5年。
裁判長は「幼いころから家事を担当し、ひとりを寂しがる被害者に寄り添った。外部とのかかわりを持たず、ふたりで相互依存するような関係で長く暮らしていたことが、被告人をゆがんだ心理状況に陥らせた」と。
判決の後、裁判長は諭すように被告に声をかけた。
「もしかしたら、お母さんはあなたが処罰を受けることを望んでいないかもしれない。ただ、今回のことは重く受けとめてください。
お父さん、妹さんが、あなたが帰るのを待っています。自分がやってしまったことを真剣に考えて……きちんと罪を償ってほしい。罪と向き合って、やり直してほしい」
顔を紅潮させて判決を聞いていた被告は、「……はい」と深くうなずいた──。
《執筆者プロフィール》
青山 泰 (あおやま・たい) 山口県生まれ。慶応大学法学部法律学科卒業。週刊誌で事件取材、皇室取材などを担当。月刊誌や医学書で編集&ライター。現在は、定期券で東京地裁に通い、ほぼ毎日傍聴を続けている。趣味はスパイスカレー作り。32種類のスパイスを常備し、究極カレーレシピ作成の試行錯誤を続けている。