「同情する価値もない」SNSでの加害者を中傷するコメント
この事件は、当初からSNSでの反響が大きかった。特に加害者の愚かさを中傷するコメントが相次いだ。
《この女はただの頭が弱いバカや(笑)》
《自業自得。同情する価値もない》
《そもそもお金で愛情を買えると思っているのが間違っている》
《ホストは疑似恋愛を提供しているだけ。付き合っていると勘違いするのは女の勝手》
確かにそういう面もあるだろう。しかし、加害者だけを一方的に責めるのは、あまりにも酷だろう。ふたりが知り合ったとき、亜紀はまだ20歳だったのだ。
被害者は、恋愛経験の少ない加害者の心情を巧みに利用している。「ふたりは付き合っている」と亜紀が思い込んでいることに気づいていながら、客として600万円もの金額を使わせている。
「ホストとしてではなく、僕とまじめに付き合ってほしい」と言って女性を操る、業界用語で“本カノ(本命の彼女)営業”と呼ばれる方法だ。
──被害者とのいい思い出は何ですか?
「誕生日やクリスマスには、ぬいぐるみやバッグをプレゼントしてもらいました」
裁判員から質問された亜紀は、淡々とそう答えた。もらったものは高いものではなく、1000円程度のものだった、という。
その後の供述が、印象的だった。
──自分はあれだけ尽くしたのに割が合わないな、とは思いませんでしたか?
「ありません。彼からもらった贈り物は、全部うれしかった」
亜紀は、きっぱりとそう答えた──。
《執筆者プロフィール》
青山 泰 (あおやま・たい) 山口県生まれ。慶応大学法学部法律学科卒業。週刊誌で事件取材、皇室取材などを担当。月刊誌や医学書で編集&ライター。現在は、定期券で東京地裁に通い、ほぼ毎日傍聴を続けている。趣味はスパイスカレー作り。32種類のスパイスを常備し、究極カレーレシピ作成の試行錯誤を続けている。